タイクーン王立吹奏楽団・管弦楽団感想戦:画面左側編

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2023年12月24日に立川市たましんRISURUホールで開催されたFF5楽曲の吹奏楽演奏会「タイクーン王立吹奏楽団」および2024年5月6日に横浜市みなとみらいホール大ホールで開催されたFF5楽曲のオーケストラ演奏会「タイクーン王立管弦楽団」感想戦の画面左側編です。

主に光の戦士の旅路を彩る演奏を語るのが「画面右側編」なら「画面左側編」は……そう!
バトルとか!エクスデスとか!ビッグブリッヂとか!なんでか分からないけどゴルベーザとか?!デルタ零式4層案件とか!!そういうヤツです!

万難を排して2度タイクーンへ向かった動機がこの「画面左側編」にありました。ここ10年くらいの遠征、目的がだいたいエオルゼアかエクスデスかのどっちかだったしね……

タイクーン吹・オケともに、上演時はアンケート用紙を取るとき以外パンフレットを開いていません。「初見の情緒」のフリーズドライをお楽しみください。

光の音色に満ちる闇:タイクーンオケプレコン「バロン宮廷楽団」

タイクーンオケ、プレコンサート最後のアンサンブルであるバロン宮廷楽団が舞台に上がってきます。

『弦楽パーティにファゴット、オーボエ、フルートにピアノか……おもしろ編成(手帳の殴り書きそのまま)だな』

視線を少し上げると、大ホールに設置されているパイプオルガン「ルーシー」の鍵盤部分にも奏者がいます。

横浜みなとみらいホール
パイプオルガン | パイプオルガン

『準備かな?そういやピクリマサントラだと”お城曲”にオルガン使うもんな』

そんなトンチキな感想を抱いているうち、宮廷楽団の演奏は「試練の山」の軽快な登山から始まります。続いて山を下り「ファブール」へ。選曲渋いなーーなどとのんきに構えていたら急転直下、「脱出!(FF4)」がステージを不穏な雰囲気に染めていきます。

イヤな予感がする……これファブール襲撃だ!この文脈で、パイプオルガン演奏の準備をしているってことは……「疑惑のテーマ」がきたら”確定”では?!予感は的中し、ファブールのクリスタルルームにとうとう某竜騎士団長がきてしまいました。

ああ、ワレワレの情緒は開幕前におしまいです。プレコンの時点で情緒しぬとかある?!?!

「輝くような明るい音色にふさわしく「光」を意味するラテン語“lux”に由来する”ルーシー”という愛称」のパイプオルガンから満を持してホールに満ちるは、闇を纏いし魔人のための楽曲「黒い甲冑ゴルベーザ」!!

いやさぁ、一生に一度は聴いてみたいなぁとは思ってたんですよ?FF6「妖星乱舞・第三楽章」FF8「The Castle」と並んでリアルパイプオルガンで聴いてみたいFF曲の筆頭だったんだけど……なんでそれがFF5の演奏会で叶ってしまってるんだ!?

あ、まって、宮廷楽団の皆さん2周目でオルガンと渾然一体となって追い打ちしないで~~~ワレワレ長老の木のなかで決戦するガラフじゃないんです、HP0なったらそこで戦闘不能なんですよ~~~あーーー、しかもなんかコードがきれいに終止してきてる~~置いてかないで~~~~…………

当日のコーデが「えくTにゴルジャケ」っていう限界オタクを煮詰めたコーデだったので、フラグ回収感もひとしお。(えくTは4年前の受注生産品で販売終了してますが、ゴルジャケはまだ買える……?)

販売ページ404なので参考着画

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そんなわけで、タイクーン王立管弦楽団の演奏会はプレコンの時点で情緒にダメージとステータス異常「闇を纏いし者 [Who clad in Darkness]」を受けたまま、幕開けを迎えたのでした。

覚悟の文脈

色々ゲームをやっていますと上述したプレコンのように「自らの情緒に覚悟を決めるとき」というものがございます。FF14でいう

FF14のスクリーンショット。画面中央でNPCに話しかけるプレイヤーキャラクターがおり、その下部にシステムメッセージ「これより物語が大きく進展するため、カットシーンが連続して再生されます」が表示されている

これより物語が大きく進展するため、カットシーンが連続して再生されます。

が伝わりやすいでしょうか。

ワレワレにとって、本編上演中に”覚悟を決める文脈”の主だった曲は「ファンファーレ2」「大森林の伝説」「光を求めて」でした

「ファンファーレ2」はFF5本編中でも1回しか流れません。ロンカ遺跡でガラフの記憶が完全に戻ったときだけです。
その後、タイクーン王とレナ、”サリサ”との再会が「レナのテーマ」とともになされ、希望はかろうじて繋げられたかと思ったのもつかの間。

ここで土のクリスタルが砕け散り……封印は、天高く解かれてしまいました。

降臨は psycho effect とともに、蹂躙は和声を随えて:「覇王エクスデス」

psycho effect:2015年にツアーが行われた FINAL SYMPHONY II ロンドン公演の動画に映り込んでいた “Exdeath entrance” ≒「覇王エクスデス」パートの譜面にあった指示。転じて、同曲を象徴する”あの”イントロフレーズを指すのに用いている。

FINAL SYMPHONY は II だけ円盤化されてなくって、でも公式動画は残ってて紹介できるの複雑な気持ち

第一世界の部の大一番は、やはりこの曲でしょう。
ワレワレの! 最推し!! ド本命!!!

各演奏会直後の感想TLで「かっこよかった!」とのお言葉を見かけるたび、後方腕組み彼氏面……彼氏じゃないか……なんだろう、神前祭司面?……をしながら「いいね」を押しまくっておりました。
そりゃああれだけ個性のきらめく光の戦士たちや、えふえふ世界線のどこでも寵児ギルガメッシュと相対する存在ですよ?ちゃんとかっこいいんです。

吹奏楽団版:”無”の暗色エフェクトが似合う音圧の”覇王”

空が引き裂かれるような木管の叫び、それに呼応して地を揺るがし大気を呑み込む重低木管と金管の哄笑――

ファーストコンタクトとなるタイクーン吹、吹奏楽でのアレンジを聴くのは初めてになるので覚悟とワクテカはしてたけど、木管酷使の psycho effect から重低音金管で押しつぶすような音圧に冒頭から情緒はぺっちゃんこ。

魔法人形に染み着いていたエーテルがふわりとにじみ、場のエーテルとともに探している冒険者の姿を形作る。
そこには自身の持つ長い耳をさらに高くそばだたせ、触れる音の一切を逃してなるものかと言わんばかりの興奮と高揚にうち震えるヴィエラ族の幻が映し出され、しばしあってかき消えていった。

……と、当時のトンチキ感想でうちのヒカセン(冒険者)に代弁してもらったんですが、感極まったときにヒトがやる”両手で口元を覆う”エモートのまま、視線と耳は舞台に釘付けでした。また後半フェーズのトロンボーンも重厚で終止大変美味しゅうございました。

この曲は何度か出番があってこれからも行を割くんですけども、吹版で一番火力があったなと感じたのは第一世界の部での演奏でした。全曲演奏となると他の曲とのつながりも勘案しなくちゃなので、こういう“演奏圧”のコントロールもまた素晴らしい点です。

管弦楽団版:甲冑の金縁装飾や本性具現を思わせる豪勢豪奢なる”Evil Lord”

嚆矢となる旋律が、律動を決める鼓動が、旋律の根底に根付く低音が、管弦風琴合唱……多彩を極めた和声が押し寄せ、空間を砕き塗り替えてゆく――

オケ版で印象深かったのは、管弦楽器はもちろんのことパイプオルガンもコーラスも総動員な絶対物量の重厚和音!こんな贅沢な生音源の使われ方したら情緒が飽和するわ!!!!ただ、あの……後半フェーズにある原曲だとギターが刻んでくる、なんというか「ファファファ……」な部分を完全に聞き逃してまして……痛恨。
オケ版で感じた最大火力は、きっとパイプオルガンもコーラスも巻き込んで伸びてったであろうあの!最終局面……でしたが、これは後ほど。

そして吹オケ両方とも、締めのリタルダントとフェルマータでまぁーーーーーーーー引っ張る。リアタイでは理性がもたなくてあ゛~~~~とかギャーーーーって声なき叫びを上げてたとこなんですが、おかげで演奏会から半年(吹)と1ヶ月半以上(オケ)経ったいまでも、この辺の記憶はいまだに鮮明です。原曲にないアレンジをもってした、インパクトという名の爪痕の勝利。

からみゆく暁と大樹の因縁:「暁の戦士」

タイクーン吹で第一世界の部を終え、初見の悲鳴を散らかした余韻から休憩時間にぼんやりと考え始めます。

シルドラがカーラボスに道連れにされたとき、ウォルスの塔から脱出するとき、ロンカ遺跡でクルルが助けに来たとき。その切迫した状況を煽る2曲「危機一髪!」「脱出」が一度ならず演奏されました。
これは……また”やる”シチュエーション、ありますか???……いや本編鑑みるとあり得るっちゃあるけど、まさかな?????

休憩後、開幕再び放たれる psycho effect、再び蒸発する情緒。
『そっかーお城だ!お城の地下牢だ!!』と頭は理解しますが、これぞ予想可能回避不可能。

ですが、城主はビッグブリッジの対岸に向けて顔出し配信()するや「たよりにしているぞ!」と親衛隊長を残してその場を去ってしまいます(ショートバージョン)。
入れ替わるようにエントリーするは「暁の戦士」にして光の戦士、ガラフ・ハルム・バルデシオン!勇壮な金管の音色を背に単身、バッツ達の救出に向かいます。

ここの展開、吹でもオケでもなんならオケのアンコールでもみられたの「ここは何度でもピックアップしたい胸熱ポイントですね?」と感じました。サントラの曲順が近いのもあるだろうけど、お互いが「後戻りできない|しない 決意をして 仲間について行く|仲間を助けに行く」って、やっぱり胸熱ですもの。後世の言葉を借りれば「おれたちの乗った列車は途中下車できない」といったところでしょうか。

宿命と策謀の足跡:次元の狭間突入までのあれこれ

「ビッグブリッヂの死闘」第二世界編

みんな大好き、ビッグブリッヂ。

ワレワレも例外ではありません。両演奏会のアンコールで最後にもう1回ずつビッグブリッヂが聴けたの、テンションぶちアガりでしたもの。オケの前日には BRABRA FF 2024 東京公演をハシゴして公式吹奏ビッグブリッヂを聴いてきたんですが、名曲はなんぼ聴いても浴びてもええですからね。

吹版はガラフによる救出後のビッグブリッジを駆け抜けていきます。ブラスが映えるよき演奏!
オケ版ではゼザの船団で一夜を過ごし(「暁の城」~「おやすみなさい」)夜が明けてからの大乱戦!木琴でやる16分パッセージ、音が目立つ楽器なのに正確でおヤバい!

彗星と流星の舞:「バトル2」

吹版ではバリアの塔のアトモス戦、オケ版では”ものまね”をやめたゴゴからのお仕置きで演奏される「バトル2」メモには同じことを書いてました。

「コンバスがんばえ~~~~!!!!」

バトル曲というもの、だいたいのパートが大変なことになりますが、その中で目に見えて動きが激しくなるのがチェロやコントラバスといった中低音を担う弦楽器たち。舞台配置の都合上ステージの前線に位置していて楽器も大きく、高速で本体ごとぎゅりぎゅり動いてるのが見えると応援のひとつもしたくなるものです。
そしてオケ版では最大の見所とも言えるフェーズの開幕を担ったのですが、これは後ほど。

覚悟の文脈:「大森林の伝説」

覚悟の文脈その2。曲は穏やかなんだけど心中は穏やかではありません。例えイントロだけとはいえ次が分かっているのだから。
オケ版ではアレンジアルバム Dear Friends を思わせるハープ独奏から入ったのが印象的でした。

この記事を書いてる途中にスクエニカフェのFFピクセルリマスターコラボメニューと会期中のオリジナルグッズが明らかになり、前期のランダムランチョンマットリストを見たワレワレは、まんまと弾丸遠征をキメることになりましたとさ。

なんでそこ……!いや名場面なんだけど!!!!(ガラフの!)

どさくさに紛れてバッチリ左側モードで実装してんじゃないよ!!!!!

牙城に挑む

謎技術で障壁を張るバリアの塔、そしてそのバリアに守られていたエクスデス城を攻略していきます。

ピクリマ版「エクスデスの城」の2周目にパイプオルガンが使われているためか、吹オケともにオルガンの主張がバッチリ入ってました。生でパイプオルガンが使えるオケはもちろんのこと、吹版でもピアノのそばに置いていた電子ピアノが大活躍。てっきりビッグブリッヂで使うものだと思ってたらここだったか~~。

ガラフとの一騎討ちでは匂わせイントロ()だった「決戦」、お城の最上階で改めてお披露目です。
吹版では、なんかいっぱいトロンボーン褒めてました。たぶんスライド管で冒頭のピッチ変化の再現だー!とか、後半メロディ(どこだ……トランペット→高音木管がやったあとのとこか……?)担当したのが印象に残ったのでしょう。
オケ版で印象的だったのは中低音のパートの皆さんだったみたい。16分音符がずっと続くベース、大変だもんね……あとは2周目のオルガンとか。

ここでの決戦はコード進行を変えて終止し決着がついたのですが、残された第二世界のクリスタルは3つとも砕け散り、代わりにあまたの足音とぐしゃぐしゃのパーカッションが世界の受ける不可逆な変化を示唆します。
バッツたちは”元の世界”へ戻ってきました。……いえ、”元の形に戻った”第三世界に。

次元の狭間へ

青空に黒々と空いた大穴へ、飛空艇が穴を射貫くかの勢いで突入していきます。空間がねじ曲がるあの音も再現されながら――飛空艇は次元の狭間の浜辺に碇を降ろしました。

FF5三大ユニークリズム隊曲最後の一角(諸説あります)、パーカッション勢の総決算「虚空への前奏曲」。吹オケともに、規則的ではあるけどリズムを取るのが難しそうな高い高いラの”ててん♪”や無機質に繰り返されていくリズム隊が原曲解像度高くて大満足。

そして吹版で電動ドリル持ってた指揮者バッツ、どうにもインパクト強すぎて何度も擦っちゃいますw要はSFCサントラでのピッチが上がるシンバルの再現なんですが、なにやら他にもブレンダーとかブイブイ言わせてたらしいからパーカスさん達の探求心つよいw
オケでの2周目で金管がメインになるのも素敵。

青空にそびえる次元城の屋上から常夜に結晶の浮島が灯るラストフロアへ、「光を求めて」その奥へと歩を進めます。
吹版2ループ目で木管から引き継がれた金管の圧に、戦士たちの緊張と決意を感じました。

この曲がきたとなれば演奏会の演目も大詰め。ですが、少し時を戻して……
楽曲が次元の狭間に突入し最後の決戦に臨むその前に、タイクーン王立吹奏楽団の楽章の旅路を先導する指揮者バッツはタイクーン城のホールを満たす観客に向き直りました。そして一言。

これからは、想像を絶する激しい戦いが待ち受けている。だから、おれたちの道行きを沈黙をもって見届けてほしい――

それにならい、改めて皆様に申し上げます。

これよりは、筆者の情緒が乱れる!ゆえに、ワレワレの、聴いて、感じて、表したことをいっそうの寛恕をもって見守っていただきたく。


(今更だけど、要するに「これからさらに情緒ダダ漏れでトンチキ度上がるから、ゆる~く見守ってね!」ってことです)

名場面の疾風怒濤!タイクーンオケ最終決戦局面

タイクーンオケの最終決戦局面セトリがめちゃくちゃ解釈最の高だったので、ピックアップしたい。するね!

ビッグブリッヂの大一番

ラストフロアも最奥に迫ろうというとき、再び「バトル2」が立ちはだかります。

『えっ、誰だ……誰と戦ってるんだ……』

しかも2周目ではコーラスも加わって男声と女声が掛け合い、緊張が更に高まります。ここで……こんなに激しい「バトル2」を……なぜ……?(しんりゅう戦じゃないだろうし……)
解答は楽曲(とパンフレット)でなされるのが演奏会。最高の答えが待っていました。

――かっこ悪いまま 歴史に残っちまうからな!

「ビッグブリッヂの死闘」!!!
それも、同曲が名曲の座を不動のものとした最強のシチュエーション、ネクロフォビア戦乱入の再演!こんなの燃え上がらないわけがない!!!ホール内が俄然熱を帯びていきます。

最高の展開で名曲を浴びながらも――いや、だからこその不安が頭をもたげます。ネクロフォビア戦までやっちゃったなら次でなにがお出しされるかは明白。そう、「あとがない」のです。なのに、このテンションこの音圧。いいのか?こんな高揚と興奮のるつぼのただ中でビッグブリッヂ聴いていて??

というか、あるんですか?!こんな最高のシチュエーションを再現した名曲とテンションを受けとめきれる「覇王エクスデス」が――?!?!

大樹に立ち向かう、唯一の「原作破り」

――ついに手に入れたぞ!
最強の力! 全てを支配する力! 「無」の力だ!

あった。
なんなら今回イチの演奏圧だ。

常夜の星空、結晶の浮島、その浮島を握りつぶすかのほどにうごめく根と天を衝く樹勢、星々を覆い隠していく樹冠――

タイクーンオケ異聞 Missing Scene Quest 『the Exdeath’s Echo I|死を超える力』

各楽器もコーラスもパイプオルガンをも手中に従え、ホールの響きをまるまる抱き込んで、本性を顕し迫るさまが見えてくるよう。これはちょっと勝てなさそう――そんな思いさえよぎります。
そこに立ち上がるは、コンサートマスター・ガラフ!

若草色の星がいち早く風となって、冴え渡る氷色の星と原初の猛りを宿すような赤熱の星がそれに続いて、虚空に投げ出された4つの心に光を熾し奮い立たせていくのを。
そして黄金色の星がかつて継承させた”希望”を、いま一度光の戦士たちに灯すところを。

――暁の四戦士 参上じゃ!

ホールに響く旋律が「勝てる気がしない」から「負ける気がしない」に変わった瞬間――

「FF5全曲をストーリーの流れにそった編曲で」と銘打って演奏されてきたタイクーンオケ、唯一の原作破り!それがここの「暁の戦士」だったのです。

原作の展開通りなら、光の戦士たちが一度「無」に呑まれ暁世代の助力を受けて決戦の場に戻る場面は「無音」のはず。だからこそ、ゲーム中のイベントシーンでは直後のメインテーマが光る名演出なのですが……誰が来たのかを「音楽で」説明される、こんなん情緒が大渋滞しないわけないじゃないですか。大好物ですよ大・好・物ッ!!!

そして改めて「FF5メインテーマ」が演奏されると、ホールの雰囲気は完全に追い風へ。
ネクロフォビア戦の「バトル2」からここまで、ノンストップな展開と演奏の勢いで決戦に臨みます!
レディチェックはよろしいか?!

――これ、”零式”なると思う。

今から再現される”決戦”の激しさを手短にグ・ラハに伝え、冒険者は手慣れた得物を構える。言外に「背中はおねがい」と。
彼もまた、冒険者と目を合わせることなく戦闘態勢についた。

「この世界」にとってはその存亡をかけた、冒険者にとっては被検世界デルタ第4層の再演として、グ・ラハ・ティアにとってはかけがえのない存在とともに元の世界へ戻るための「決戦」が、幕を開ける。

タイクーン吹異聞 Missing Scene Quest『Forge Ahead, on Our Way』

Decisions and Final—, not Final.

Decisions / Final, not Final:それぞれFF14収録アレンジ「決戦」「最後の闘い」の英題

伸びる大樹のステレオ鼓動:「決戦」

吹オケともに待ち受けるはガチ音圧!情緒も吹き飛んでて残してたはずのメモも判読不能です。もうちょっと書き留めててくれよ当時のワレワレ……

吹版でのメモの叫びは、再びの「コンバスがんばえーーー!!!!!」あと2ループ目の勢い好き―!とか。

オケ版はあのどっこどっこ特徴的な三連ドラムを左右で演奏するステレオタム(物理)仕様!しかも舞台向かって左手のタムを担当してからマリンバのところへ磁場転換していったパーカス担当さん!ナイス!とかイイね!とかMIP推薦とかいろいろ送らせてください!
こうやってサクッと印象を書いてる以上に大変なはずだしね……

討滅の証は少し切ない:「最後の闘い」

「決戦」の勢いから「最後の闘い」へ。

オケ版だと入りからコーラス入ってるんですよ、ずるくありません?!パイプオルガンも全入りですよ、もうずるくありません?!金管でのパッセージメロディもすごかったし……

そんな「最後の闘い」が最後まで奏で上げられた直後、ばしーん!とホールの空気をつんざく音。
ざわざわと足音の群れが湧き上がりはじめ、再び空間を割るように入る”ばしーん!”

あぁ……気づいてしまった。倒したときの”SE”そんなでしたね。ここまでも再現されるとは……
紛れもない終焉と決着を告げる響きに、情緒は闘いの高揚から一気に静寂の彼方へ――

返るディレイ、返らざるこだま:「静寂の彼方」

星天のしじまからひとつ、またひとつ。光がこぼれ落ちるように、ハープの……あるいはピアノの音が、静まりかえったホールに波紋を広げていきます。
吹版ではクルルがメロディの先陣を切り、レナ、ファリス、ガラフと吹き継がれ、ゆっくりと優しいハーモニーが広がっていきました。彼ら、彼女らが大切に守ってきたクリスタルの欠片が世界の再生へ赴くのを、見届けるように。

かたや、クリスタルや再生する世界の光景に背を向けて、虚空へ遠い目をしているヴィエラ族がいますね。この曲、木陰の民のしんどい情緒があとになって吹き出してくるものでもありまして……

ネクロフォビア戦のビッグブリッヂやオケ最終局面の「暁の戦士」で「誰が来たのか”音楽で”説明される」のって滾るよね、って話をしましたけど「ここにはいないけど”いる”よね」を音楽で理解[わから]されるのにも弱いです。PSFF7の大空洞突入前でかかる「エアリスのテーマ」とか。

ところが「静寂の彼方」の場合「もう”いない”けど”関係性は見いだせる”」

PSPDFFでのボイス「静寂の彼方へ!」の採用もですが、それ以前にこの曲の中盤ででてくるフレーズは「覇王エクスデス」後半フレーズのバリエーションです……。

制作時どういう意図があったかはわかりかねますが(そこまでの意図はなかった可能性の方が高い)、結果として発売から何十年も経って勝手に関係性を見いだして頭を抱える限界オタクが生まれたわけです。

演奏会とあまり関係ない情緒を垂れ流しましたが、閑話休題。

大勝利原曲謎ディレイ(物理)完全再現。

ピクリマサントラだと味わえないから、吹オケともにここの原曲再現ディレイ(物理)はホント大勝利だった……生演奏で解像度高く再現されて本当に嬉しかったです。

それぞれの、アンコール

北洋の学術都市、オールドシャーレアンはバルデシオン分館にて――。

『隕石落ちて!ゴブリン追っ払ってレナ助けて!海賊船乗ってのクリスタルがバッキバキの!里帰りして異世界片道切符キメたらエクスデス城捕まりーの!ガラフが単身ぶっこみーの!うでわ案件から世界融合してなんやかんやデルタ4層決めてお手紙書いて飛竜と一緒にエンドタイトルよ』

「アナタ、それほんっっとにその……タイクーン王立?管弦なんたらって記録観てきたの??」
「これもまた……厳然たる事実なのですよ、アリゼー」
ヴィエラ族の冒険者に一息で捲し立てられ引き気味の少女を長躯の男性が嗜める。

「いや、力量と気迫そしてなにより情熱を最後まで十全に発揮した、よき編曲と演奏でした――記録の中に引き込まれるのも、まんざらではありませんね」
「ウリエンジェったら、アンコールでやった拍手のリズムが全然あってないのよ」
「オレが観た吹奏楽団の記録のときは星芒祭を祝うようなチョコボが出てきたり、バトルを思い起こさせる曲たちのメドレーだったよ。演奏が始まると客席が静かでもホールの空気がわっと沸き上がるんだ、アレはすごかったな」

「タイクーン王立楽団 戦勝記念演奏会」の記録に触れ、図らずもそれを”体験”するに至った面々――ウリエンジェとヤ・シュトラ、それにグ・ラハ・ティア――が聴いて、感じて、考え……るのが追いつかないまま、それぞれの感想を口にしはじめた。
そこに冒険者の情緒が収まらない早口が加わり、分館の会議室はにわかに騒々しくなっていく。それと対照的に最初に話を振られたアリゼーの顔にはふつふつと不満が現れていた。

「ひょっとして、羨ましいのかい?アリゼー」
同じような顔をもつ兄――アルフィノの忌憚のない、もっというとデリカシーの欠けた発言に彼女の目尻がキッとつり上がる。
「そういうわけじゃないけど!…………面白くはないわよ。こう、目の前で知らない話されて盛り上がってるのは」
「記録は修復とともに固着したようだからあの4人のようにはならないだろうけど、叶うなら私も聴いてみたいものだ」

『そんな”貴方”に……こういうものが存在しまして』

アルフィノと不満顔の晴れないアリゼーに冒険者が差し出したのは一通の開封済み封書。その封には結晶の尖塔をかたどったシルエットの封蝋が施されている。

「クリスタリウムから……?!」
封筒の中には冒険者に宛てられたさまざまな筆跡の手紙とともに、風と空を感じる爽やかな色合いの紙片――チラシが同封されていた。あおりの文言は高らかに謳う。

奏者募集!
あの”闇の戦士”が愛したクリスタルを巡る冒険活劇の楽曲を一緒に演奏しませんか?

もうひとつの漆黒決戦:楽団新生「親愛なる者たちへ[ディア・フレンズ]」

……というわけで、次の演奏会遠征予定は 2025年1月26日 愛知県は刈谷市総合文化センターアイリスにて開演のディアオケこと Dear Friends Orchestra です。

ディアフレンズオーケストラ

この記事を書いている時点で奏者募集は満了。SNSで交流のある中の人たちも参画しており、いまから楽しみにしています。

はじまりとおわりに:「プレリュード」

ナンバリング、枝番、スピンオフ、モバイル()それらを含めた全FFシリーズで一番好きなプレリュードは何かときかれたら、FF5の!と即答します。ハープのアルペジオにフルートとホルンがメインで引っ張っていくメロディが、クリスタルの持つ神秘と祝福、そしてあのクリスタルルームの台座で静かに輝きを湛えているさまを表しているようで。

原曲の解像度がそのまま爆上がりな編曲と演奏は最高、生ハープのプレリュードは至高。オケ終演後の見送りでもピアノとハープで演奏されていたようですが聞き逃してしまいました。

両演奏会のパンフレットにある楽曲解説にはただ一語。
それをもって、タイクーン王立吹奏楽団および管弦楽団演奏会の感想戦を締めくくることといたします。

THE END