最初に、140文字で分かる「錫の音」演奏会まとめ。
以降の文章は、この事実の拡張版とt(略
- 「星の調べ」プロデュース金管アンサンブル演奏会、室内楽演奏ホールにて昼夜2回公演。我々は昼の部参加
- 構成はトランペット2、トロンボーン、ホルン、チューバ各1
- 開演までは軽い飲食物が供され、「プレリュード」BGMに参加者談笑
- 前半:「クリスタルのある洞窟」~「果てしなき大海原」
- 幕間:奏者とリスナーの逢瀬(交流のお時間)
- 後半:「水の巫女エリア」~「最後の死闘」、「ファイナルファンタジー」
- アンコール:セシルとカインとジタンとダガーがログインしました
- つまるところ:いいぞ、もっとやれ。
双方もっとやっちまえるよう各方面諸姉諸兄おぬがいします
曲目を列挙したあたりから薄々感づいてはいたが、文字数が氾濫したな……
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錫。
原子番号50の元素で、元素記号は Sn。元素記号はラテン語の stannum に由来する。
金管楽器の材料として用いられる黄銅(真鍮)の中に含まれていることもある。
(Wikipedia「錫」「黄銅」の項より抜粋して掲載)
中世畏国の劇伴曲を演奏することで知られる「星の調べ」が擁立する、金管アンサンブル『錫の音』。
その船出となる演奏会が、10月27日王都某所にて開かれた。
先述した「なんとしても明日(27日)の午前中には王都に着かねばならぬ」理由がこれである。
会場の音楽堂が面する通りには、開場を待ちわびる参加者がめいめいに時間をつぶしていた。
開場の時が訪れ、続々と吸い込まれてゆく人の群れに紛れて我々も会場の門をくぐる。
その設えは、我々の知る限りの「ゲーム音楽コンサート」とは一線を画すものであった。
『そういや『おしゃれしてきてくださいね』みたいなこと、サイトに書いてあったなぁ……』
我が身を見返り独りごちる奴を一瞥して、ウェルカムドリンクと軽食を受け取り適当な座席で時を待つ。
現実にはいわゆる「おひとりさま」なのだが、演奏会の性質上、他の参加者との話題には事欠かない。
会場に漂う談笑のさざ波を「前奏曲」が包む。
時計が気になる開演前……
トランペット(2名)、トロンボーン、ホルン、チューバ。
きらびやかな金管楽器とその奏者が拍手に迎えられ、各々の位置につく。
客入れの「前奏曲」が緩やかに退場し、一息の静寂のあと白亜の音楽堂が真鍮の響きに満たされた。
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「……よっ!ひっさしぶり、“おれ”!」
落下音を引き連れ意識の世界で身を起こしたのは、白地に赤い装飾を施した法衣を纏い同じ意匠の冠を頭に抱く高位魔道士・賢者の姿をした少年だった。
私を指して屈託なく「おれ」と言うこやつは、同じ名を持つ「枝」のようなものだ。
……クリスタルタワーを登り切り、暗闇の雲を退けた 光 の 戦 士 であることを考慮の外に置けば。
異説の対戦でもあるまいし、同じ名の登場人物が複数いるというのはなんとも煩雑だ。
私と読者諸姉諸兄の混乱を払拭するため、あちらの「枝」を便宜的に「サクシード」1と呼ぶことにしよう。
「おれファミコン版なのに、ディーエス版でやったネタ使うんだ?」
早速小賢しい口をきく小さな賢者に、異説で知った「ピヨピヨ口の刑」を執行した。
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前半は物語本編と同じく「♪クリスタルのある洞窟」から始まる。
洞窟を抜け「♪バトル1」を戦い抜くと、「♪悠久の風」吹き渡る大陸が広がる。
「♪故郷の街ウル」でひとときの安らぎを味わい、浮遊大陸をさまよう「♪ハインの城」に挑む。
エンタープライズが「♪海をゆき」時の歯車を得て「♪空を飛んだ」2その先に……広がるは「♪果てしなき大海原」。
真鍮の響きは時に大気をつんざくほど強く、あるときはその材質の示すごとくきらびやかに、そのまたあるときには木管楽器と見紛うほど柔らかく、多彩な表情でクリスタルの物語を紡ぐ。
聞くところによると「錫の音」の奏者は原作作品を知らず、その主宰が物語から舞台背景、さらには「学者は本で攻撃する」などといった作品独特の小ネタを紹介し「指導」したという。
16分音符や三連符で旋律が駆け上がり、駆け下りる。細かな装飾音符、乱高下するメロディ、緩急強弱のついた進行……専門職の楽器構成に即した編曲と高度な技巧に支えられた演奏は、近作の携帯機リメイク版よりも、むしろファミコン版のそれを彷彿とさせた。
「あのしゅっこしゅっこ出たり引っ込んだりするヤツかっけー」
……故に、ルーネス一行ではなく、こやつがしゃしゃり出ているわけだが。
あと、それはトロンボーンだ。第7ポジションに留意せよ。
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大海原を漂う幕間、2杯目のドリンクで渇きを癒やしていると、テーブルに近づく人影。
赤のドレスが照明に映える、ホルン奏者であった。
現実で少し言葉を交わしたようだが、奴が高知から出てきたことに驚かれてしまった……
通常「コンサート」ともなれば奏者もリスナーも大きな数となり、会場は大きなホールへ、奏者は舞台の上、リスナーは座席—と会場が両者を隔てる。
翻って室内楽演奏ホールを会場とした今回は「アンサンブル」であり、両者の距離は限りなく近かった。
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客席からじんわりと満たされた「前奏曲」で、後半の幕は上がる。
「♪水の巫女エリア」の祈りでよみがえった地上を旅し、ついに「♪クリスタルタワー」へ。
「♪バトル2」を制し、「♪闇のクリスタル」の領域に踏み込む。
闇の極まる暗雲を「♪最後の死闘」で打ち破れば、「♪ファイナルファンタジー」33の大団円だ。
物語終盤のクライマックスを集約した編成に、高揚を抑える手立ては存在しない。
うずうずと手指足がリズムを刻む(現実の)奴はもちろんのこと、この意識下の世界ともなれば一連のイベント画面は再生されるわ、戦闘シーンの記憶はよみがえるわ、想起されるものは枚挙にいとまがない。
「いやー、やっぱバトルかっこいいなー ”おれ”もなんかお気に入りあった?」
『……「♪水の巫女エリア」』
「あ、泣いてる?」
……泣いてなど、いない。
そ、その辺に漂う、きらめきは、周囲リスナーの、心に「無」が反応して、だ、な……
「ふうん……? …はがっ!むg」
なおも意味ありげな上目遣いでのぞき込むサクシードの口に軽食を押し込み、追撃を断つ。
我が「枝」ながら、なまいきだ。
いや、「かけっこしようよ!」4 などと言わぬだけ、まだましなのであろうが……
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すべての演目が終了し、この意識下の世界でもどこからともなく喝采が飛び交う。
それは次第に大きく、喧噪を帯びてくる。
「天に舞え!」
「誓いの槍よ!」
「逢いたいんだ!いとしのダガーに!!!!」
「うおおおおアンコールkーtーkーrー」
えーい、貴様ら静かにせんかーーーッ
聖騎士と竜騎士は武器をしまえーーー!
ジーターンーはー爆発しろーーー!
「”おれ”が一番うるさい!」
サクシードの声と、その両手の杖が私を打ち据えるのは同時だった。
この演奏会で唯一のパーカッションに………視界が傾ぐ。
「せっかく皆さん集まったのですから……」
未だ残響に苛まれる私をよそに、石榴石5の姫君がその朗らかな声で一同の喧噪を鎮める。
かくして、演奏は「もうちょっと続いた」のだった。
Final Fantasy 4「バトル1」
Final Fantasy 9「その扉の向こうに」
アンコール曲は以上の2曲。
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会場から同じ経路で遠ざかる道すがら。
万雷の拍手を打ち鳴らした手の痺れが、興奮の余韻を語る。
ゲーム音楽とは、ある種のプロトコル6である―というのが、奴の持論だ。
「作品の要素・劇伴」の使命を十分に果たす楽曲群は、プレイヤーの記憶やそれに付随する感情を共有する。
それが時に国境をも越えることは論を待たない。
しかしながら、それらを弾きたい・吹きたい・聴きたい——となったとき、権利的・法的・金銭的な障壁・乱麻というものは避けがたい。
その問題の一端をつまんでいるであろう我々もまた、目をそらすことのできぬところだ。
だが、この報告に記載するには、言葉も思慮も経験も持ち合わせが不足している。
「すべての人が ほんの少しずつ 優しくなりますように」
獅子戦争で有名な金言をもって、心情に代えよう。
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さて、演奏会は盛会のうちにお開きと相成ったのだが、遠征日程としてはこれからが正念場。
翌日のM3 2012 秋の準備もまだ残っている。7
遠征荷物を引き取りチェックインを済ませ、多少の作業を外で終えた奴の肉体は、はやくも疲労困憊の四文字だ。
片足をルクセンダルクに、もう一方の足を M3 修羅場会場につけ、最後の一夜が更けていく。
それを見やる私の下で、見守るもう一つの影があった。
- DSFF3のリネームネタ。Thaxeedはアナグラム [↩]
- 「エンタープライズ海をゆく」「エンタープライズ空を飛ぶ」のメドレー [↩]
- あのメインテーマに「ファイナルファンタジー」と題されたのはFF5から。FF3ではオープニング(とエンディング)を飾る曲である [↩]
- DISSIDIA 012 オニオンナイトのエンカウントボイス。なぜ「かけっこ」なのかといえば…… [↩]
- 「ざくろ石」ガーネットの和名 [↩]
- 原義は「複数の者が対象となる事項を確実に実行するための手順等について定めたもの」「外交儀礼」。ここでは特にTCP/IPといった「通信プロトコル」を意識している。「音楽でこそ、通ずるものがある」ということか。 [↩]
- 報告が既に1ヶ月遅れなのは言わないことだ…… [↩]
コメント
「錫の音」演奏会楽しそうですね。FFTの曲も演奏したのかあ、僕も行ってみたかったな。(-.-)でも、おしゃれしてきてくださいと言うとあんまりいい服持っていねぇ・・・・。ところどころにFFキャラクターのセリフがおもしろいです。(^◇^)
そろそろ店ではクリスマスのシーズンですね。僕もクリスマスぐらいはゆっくり過ごしてみたいものです。ちなみにクリスマスはフランス語で「ノエル」、イタリア語で「ナターレ」、ドイツ語で「ワイナハテン」というそうです。FF13-2のキャラクター「ノエル」もこれが由来です。ワイナハテンというとニュアンスが神々しくてかっこいい。(^-^)
それじゃ僕も獅子戦争で有名な名言を贈ります。
「今さら疑うものか!!私はお前を信じる!!」
……今読み返してみたら、今回の錫の音演奏会が「FF3のである」って明言してないorz
曲目でわかるっちゃわかるんだけど、まぁあれだけ書き散らしたら見落としかねないわな……
ほしらべとしての活動は現在お休み中だそうです。
今年のクリスマスは連休明けか……
近くになると毎年「ブッシュドノエル食べたい」と息巻くんですが、
ひとりで食べきれないボリュームに毎年買わず挫折しています。
そんなブッシュドノエルは、「クリスマスの薪」という意味だそう。
(だからネタにしたいって気持ちがあるんだけど胃袋の小ささには勝てない……)