ここに、紀行録がある。
そう言うには若干体裁の整わない外見だが、れっきとした紀行録だ。
納められた記録の名は「光のオーケストラ」。
奏者の力を持つ光の戦士たちと合唱の力を持つ光の戦士団「ルイゾワスマイル合唱団」によって為された、一大アライアンスレイドコンテンツである。
私は「光のオーケストラ」にリスナーロールで参戦した光の戦士に同行した、ただのネシカストラップだ。ロールを敢えて定義するならば「名刺」だろう。1
ともに一部始終を観た者として、この紀行録から「再演」を試みてみよう。かの異邦の詩人のようにはいくまいが幻想の如きあの時への呼び水となれば幸甚の限りだ。
再演にあたり、紀行録を記したリスナーロールヒカセンの情報を提示しておく。
幕開け前
開場時間を待ちわびるリスナーヒカセンによって、会場には新パッチ公開直後のログイン戦争を三次元化するとこうなるのでは、という大行列が形成されていた。また、ホール前のホワイエには、有志ヒカセンによる花の鼓舞がいくつも為されていた。
事前にプレコンサートの告知がされていたこともあり、開演前の客席は期待にふくらみ雑然としている。そこに二つの演奏パーティが入ってきた。
アバラシアンカルテット
雲に隠れて(アバラシア雲海・昼)/エオルゼアdeチョコボ
弦楽ライトパーティ、ことアバラバラバラアバラシアンカルテットからは歓迎にふさわしい、朗らかな楽曲が供された。馴染みの深いチョコボも弦楽四重奏ではまた違った趣があるものだ。
アルテマ村音楽隊
潮風香る街/猛き嵐の剣
次に迎えるは、フルパーティ+1のアルテマ村音楽隊。 まずはラノシアの町の情景をティンホイッスルをメインに、続いてイクサル族の領域を雄々しく演じ上げた。
「範囲スキルの使用はご遠慮ください」
「フラッシュはヘイトが集中します」
開演直前には初見ヒカセンにもよく分かるリスナーロール攻略のアナウンスマクロが流れ、奏者ロール、ルイゾワスマイル合唱団、そして指揮者がそれぞれの攻略の位置に着く。
1年の洗練をいまここに……「光のオーケストラ」START!
第1部:新生編
そして世界へ
エオルゼアに降り立った冒険者達を始まりの都市国家から広い世界へ送り出すファンファーレはハイデリンのみならず、いくつもの別次元に通底する旋律でもある。
しかし、開幕に演じられたこの楽曲は、Verseltzarにとってそれ以上の意味を持つ。
これより1年と3ヶ月ほど前に大団円で幕を下ろした「交響組曲エオルゼア」。最後の最後まで鳴り止まぬ大喝采に応えたアンコールのひとつが、まさにこの楽曲なのだ。
「あの夜」のつづきが、ほかならぬ光の戦士の力で幕を上げる。
こみ上げるものが双眸で解き放たれるには、それだけで十分であった。
新時代の暁
希望の都/母なる母港/水車の調べ
光の戦士が最初に降り立つ三都の楽曲メドレーは「光のお父さん」の実写でも「光のお父さん計画」発動を暗示した、曲名どおり「希望」を歌いあげるウルダハ市街の楽曲からはじまる。
高音の金管に思わず拳を握り、ルイゾワスマイル合唱団によるコーラスが原曲にない華を添える。中盤のホルンもよき見せ所であった。
フルートのソロから弦ロールのピチカートが曲を繫ぎ、Verseltzarの母港リムサ・ロミンサに到着する。 指揮者おにく先生の寄せては返す海のような雄大な流れの指揮に導かれ、演奏は優美に進行。
そのあとのパーカッションが、この曲目の白眉といえよう。にぎやかな打音の数々が海上都市の活気を物語るのだ。
三都の楽曲演奏の最後はグリダニアだ。
来訪当初「時報かと思った」という原曲の部分2がルイスマコーラスとともに再現されるのには感服した。
サスタシャに挑む者達
隠し財宝を求めて/名誉に賭けて/ネメシス
\シャキーン!!/
サスタシャからはじまる新生インスタンスダンジョンおなじみの戦闘曲群。
なんといっても白眉は「ネメシス」だ。ゴツゴツと不吉な出だしのピアノに限界の強さでたたきつけられるティンパニ、呼応するパーカッションと管弦群、これで闘志の沸き立たぬヒカセンはおるまい。
しかし、ネメシスに隠れながら道中の戦闘曲も漏らさず挙げ弾き通した故の楽曲の流れの良さにも触れておこう。多くのヒカセンが通った道なのだから。
勝利のファンファーレ
こちらも親のナントカより聞いたナントカだろう。
最後の最後で「新時代の暁」(上記三都メドレー名ではなく、新生収録曲。新生エンディングシーン曲)に移行したような気がしたが。
モードゥナに集う猛者達
フロンティア/極限を超えて
まさに大迷宮攻略とそのトークン交換に奔走したヒカセンのための選曲。
「極限を超えて」は交響組曲エオルゼアでも演奏されたが、終盤のアレンジを変えてきているところが非常によきところであった。
究極幻想
開演前に、奏者ロールの全員が一斉に音を出したのを目にしただろう。アレはレディチェックのようなものだ。そのレディチェックをこの楽曲の前にもう一度行ったことで、期待と緊張は否応なしに高まる。
テンポを少し抑えた演奏はルイスマの合唱と相まって、重厚なアルテマウェポンとの闘いとなった。
制圧巨塔 シリウス大灯台
座礁(制圧巨塔 シリウス大灯台)
ルイスマソプラノパートがタンクの如く先導していく曲目。 彼女らと、ヴィオラ&コンサートマスターの掛け合いにMIPを送ろう。
氷結の幻想
雪原の足跡/忘却の彼方
交響組曲エオルゼアでは、弦楽四重奏でホールのあちこちにハンカチを濡らし鼻をすすり上げるヒカセンを生み出した「忘却の彼方」。
此度はいかなる演奏となるのか……密かに楽しみにしていた演目だ。
はたして、ダイヤモンドダストのあとに降りてきたのは……正統派のオーケストラ編成だった!
幻龍残骸 黙約の塔
銀の涙/始祖たる幻龍
この席からは、ヴァイオリンの動きがよく見えた。きゅうと押さえ上げた弦から、絹糸のごとき高音が紡ぎ出される。
演奏が進むにつれ、楽曲の視点が幻龍を見上げるそれからもっと高く、風を切るものに変わったのを確かに感じ取った。
幕間なき幕間
「休憩時間というものに“休憩”はない」
FF14関連生放送にある不文律である3。
この「お約束」をヒカオケ運営が知らぬワケがない。
そして、それを見越さぬリスナーロールではない。
ほどなく、一台のピアノフォルテに二人の奏者が位置に着く。連弾による演目が始まった。
サクサクまめこ
古の都(神聖遺跡 古アムダプール市街)
光溢れる楽曲にもかかわらず、ぶつぶつ呻きながら眉間にしわを寄せて聞く始末。
アムダプール、という固有名詞が出たのは演奏が終わってからだった。
Equiblium(女神ソフィア討滅戦)
聞いたことがある旋律だ。しかし、これまた曲と情景がつながらない。 もどかしさからメロディを咀嚼するようにハミングを繰り返し、隣席のメンバーと答え合わせを始める。
第2部:蒼天編
蒼天のイシュガルド
雪風
蒼天編の演目は、原曲よりも少しテンポを抑えたプレリュードで幕を開けた。
壮麗なる皇都
雲霧街の夜霧/堅牢
皇都イシュガルドに到着したのは夜のようだ。原曲にはあって今構成にはない鍵盤楽器、チェンバロの部分の置き換えが印象に残る。一夜明け、壮麗な街並みを弦の三連符が厳かに表現した。
風に向かって
皇都をあとにした雪中の行軍は、ビブラフォンの響く瞬く間に見知った編曲ヒカセンの色に塗り上げられ、雪に残す足跡の幅が狭く小さくなった。
対話への旅路
彩られし山麓
白銀の世界から一転、鳥のさえずりが新天地への先導を務める。
終盤の雄大な情景を思わせる盛り上がりも「さあ来い!」と念じたとおりの再現で心みたされる演目となった。
いざ、シャーレアンへ
欠けた頁/約束の地/マトーヤの洞窟〜蒼天〜/ビブリオフォビア
ここより先は未踏の地、未知なる運命の道である。
茫洋とした情景を想像させる低地ドラヴァニアから活気溢れるイディルシャイアへ。
マトーヤの洞窟はしっかりとしたチェロの中低音と、つややかなオーボエに先導されて進む。
不穏なピアノで幻想図書館の扉が開き、まだ見ぬ書架の威容を垣間見るのだった。
蒼天聖戦 魔科学研究所
イマジネーション/不吉なる前兆
Verseltzarにとって個人的な因縁をもつ魔科学研究所。 力強いパーカッションに先導され、駆けるように闘いへとなだれ込む。
これまでテンポを少し抑えた演奏が見受けられたが「不吉なる前兆」では逆にテンポを上げ、演奏の迫力をもってヒカセンを鼓舞していった。
蒼天幻想 ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦
英傑は死なず/英傑
円卓の騎士との闘いは、めくるめく場面の表情とメリハリある演奏で展開されていた。
しかし、一転した無音のあと奏者一斉でバタバタ靴を鳴らすパーカッションが異様な空気を降ろしてくる。
実際に剣を交えたならば感慨もひとしおだろう。異邦の詩人によって盛りに盛られた蒼天幻想へ通い詰めていたならばなおさらだ。
納得の履行技のあとは、濃厚な金管が更なる激闘を盛り上げる。
二周目後半にはDPS高きパーカスも増量され、楽曲も佳境に入るというそのとき!
指揮者が!指揮の細剣を捨てた!かわりにアレは……なんだ?!
ニャンだ!グングニルだ!
ふくよかな輪郭をたたえた蒼の竜騎士が……蒼天を、穿つ!!
四国合同演習
石と鋼
所属三次元DCのはなしではないぞ?「”よんごく”ごうどうえんしゅう」な。
最期の咆哮 ニーズヘッグ征竜戦
Dragonsong/邪竜の急襲/最期の咆哮/ただ死者のみが見る
竜詩の歌は原曲本来にはない、男声を交えた混声合唱で始まる。
イシュガルドの道半ばな自らの征く「先」に思いを馳せ滲んできた涙を、邪竜の咆哮が吹き飛ばす。楽曲の絶妙な繋がりに死闘の情景を観て、そして……
—Never know…
かすかな女声からピアノとハープが旋律を繋ぎ、竜詩戦争が静かな終結を迎える。
奏者、合唱、指揮者、客席。
「ただ見る」者たちを送り、全てを止め、もたらされた終演の静寂こそ、この演目で最も讃えられるべきMIPであろう。
アンコール
客席の拍手とはなにか!
それすなわちDPSチェックである!!
Torn from the Heaven(天より降りし力)
左右の手になるバランスゲージが赤く錬成されたところでDPSチェックはクリア。
奏者聴者共に「超える力」が付与された!
次回予告
堂々巡り/事件屋のアレ
予感はしていた。
開幕や休憩後などのタイミングで行われることが多い祝電披露フェーズをこんな終盤で持ち込むのには、なにかがあると。
具体的には「お着替え」がある、と。
「もしや……ワタシのファンなのでは?!」
期待に違わず、おにくブランドが壇上に躍り出る。
はじける金管!踊る弦楽!はじけるパーカス!はじけるルイスマ!!はじけて破れるおにくブランドの服……は元から破れていたか。
紅蓮メドレー
紅蓮のプレリュード
力強いスネアロールに、リスナーロールヒカセンが沸き上がった。
ここからは「交響組曲エオルゼア」で未だ描き出されていない世界。
解放者達の足跡を、スプリントで駆け抜ける。
紅の夜明け(クガネ昼)
大太鼓、鈴、錫杖?ひんがしの国固有の打楽器がエオルゼアの管弦楽と溶け込む東西折衷の演奏は、まさにDPS高きパーカス勢の面目躍如といえる一曲であった。
鬨の声
すとーもっぶらっど!( ゚∀゚)o彡゚ ぼんふぉーぶらっど!( ゚∀゚)o彡゚
おう゛ぁふぉるんぶらざーーーーーず!
ぼーあぽんあゎはんず!( ゚∀゚)o彡゚
くれでぃりんがゎあむず!( ゚∀゚)o彡゚
すうぇりんがあゎはーーーーーーつ!
れーずゅやうぃーりーへっず!( ゚∀゚)o彡゚
ひーたこーとぅあむず!( ゚∀゚)o彡゚
りんぎんにゅあはーーーーーつ!
カイエンのテーマ ~紅蓮~
鬨の声上がる激しい闘いから一転、望郷の旋律がホールを満たすと、どこからともなく涙腺が緩み鼻をすすり上げる音が上がる。
銀鱗と鋼鉄
楽曲で察し燃え上がる解放者とは逆に、Verseltzar のエーテルは抜け落ちていた。
今(4.5)話題の抜け方ではなく、これは原因がはっきりとした「困惑」だ。
楽曲だけ予習をしていると、こういうことが起こる。
壊神の拳の届くところ
ばぱーん!と誇らしき金管がひびくと、すこんと抜けていたエーテルが即座に戻ってきた。
なにが、どうなったのか、少しなりとも把握したようで、解放者達と共にうろ覚えのアラミゴ国歌斉唱に加わる。
涙腺を抑えきれぬもの、奏者以前にアラミゴの民であろうとするもの、これから待ち受ける運命を感じ取るもの。 それぞれの感慨が渾然となってホールに満ち満ちていった。
月影に見送られて
Tsukuyomi
母の誇り(ヤンサ・夜)/月下美人/狂える月夜/月下彼岸花
覚めやらぬ熱狂が口から止めどなく溢れるもの、ともすれば失われていくその残滓を紙片に書き留めるもの、終演後も客席は騒然としていた。
そこで名残を惜しむように演奏されたのは、ある「女」にまつわる一連の楽曲。
ちょうど「彼女」のような月影4に見送られ、アライアンスレイド「光のオーケストラ」は大団円のうちにコンプリートされた。
追記:赤裸々の涙 2019/1/29
遅ればせながら、ファミ通 No.1573(2019/2/7号)の「吉田の日々赤裸々」読みました。
「相手の心情を慮って」およそ5倍の字数を費やしたギミックのあとの本旨のうちに「無料だからこそできる仕組みってのがある」ってのがあります。
そうなんだよ。サブカル一発オケって、いろんな事情あるから、基本 EX Rare (無料で手に入れられても他者に譲渡・売却できない)なんだよ……
ファン団体による二次創作に対して、公式の制作・運営陣のひとりとして言葉を表す難しさ、バランス感覚。思いの丈が直接届くように各方面に気を使って、言葉と配慮を尽くして、なおこんなに。
なんて、なんて幸せなんだろう……
ヒカオケは「(それなりに長いつきあいがあるとは言え)メンバーが同じFCにいる」ってだけの関係のいちリスナーですが、一度目を通しただけで涙が止まりませんでした。
終盤に凝縮された本旨はもちろん読んでほしいし、その前にあった「仕組み」のたとえ話もわかりやすかったんで、買おう。これからだとバックナンバーか電子書籍になるのかな……
ちなみに、ファミ通と一緒にからあげクンLBフレイバーを買って
\ワオン!/\シャキーン!!!/
というコンボをかまし、レジのクルーさんを驚かせてしまったのはまた別の話。
そして、ここまで泣いておいて実は「若葉がとれてない」(冒頭の諸注意はそういうことです)のです。
いってくるぞよしだあああああああああ!!!!!
- 「初見です」のFC所属者と顔を合わせた際に提示すれば容易に頭上へ名前が表示される、というわけだ。 [↩]
- サントラ・オーケストリオン譜2:16〜 [↩]
- 生放送の休憩中、海外イベントの模様や関連バンドのMVが流される。休憩時間なのに視聴者にとっては「休憩にならない」 [↩]
- 当日は上弦の月に近づくところで、左右逆のケはあるが気にしてはいけない [↩]
あぁ、これは「あの夜」のつづきだ。