アストルティアの白き大地の屋根から、彼方を臨む人影4つ。
その空には世界を蝕む穴が穿たれていた。
縁[えにし]に因[ちな]み、使命を宿して挑むのは、我らがホームタウンドミナの新星古豪混成部隊だ。
無法者の一揃えを初々しく纏う新星ツメ盗賊のヘグを先頭に、黒き猛禽のブーメランを背負った おにいちゃん がそれに続く。
「無法者のバンダナって、宿屋の方のリッカちゃん1な感じするよね」
「そっちがモデルじゃないかって言われると、ちょっとやだなぁ」
最後尾を走るディナテスの言葉に頬を膨らませるのは、この報告でも馴染みとなった りっか だ。
今回の彼女は長杖を背負った魔法戦士、いわゆる電池魔戦である。
再び足を踏み入れた魔瘴の牙城は、かつての峻厳なる外殻を捨て、本性をむき出しにした姿へと変貌していた。
有機的な無機物が無秩序につなぎ止める外殻を、一行はひた走る。
「なんか、どっかの誰かさんちみたいだよねー?」2
積極的な肯定はしないが、否定もするまい。
一行が歩を進めるたび、魔を含んだ大気が濃く、重くなってゆく。
それを振り払うがごとく、4人は最奥たる玉座への扉で鬨の声を上げた。
したまつげ、ちょうちん袖。
傾いだ玉座に傲然と座す若き冥王へ、各々が評する言葉には緊張感のかけらもない。
しかし、この4人のみならず数多くのアストルティア民の数奇な旅立ちの発端は、この したまつげ だ。
その手に死をうたい、恐怖の戸を叩き、魔瘴の川を渡る。
望み絶つ鎌を持つ者が蒔いた種を刈り取るときが、ここにはじまった。
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「「ヘグちゃん!」」
前線で悲鳴と、その周辺から焦燥をにじませた声とが上がったのは同時だった。
そして
「「ザオラ……あ」」
蘇生呪文の合唱と、詠唱者が互いに気づいて中断したところも。
「どうぞどうぞ」
「うちホイミするから どうぞどうぞ」
我らが おにいちゃん とディナテスは何をやっているのだ?
どこの 倶楽部ランドンクイナ だ。
……気を取り直して。
前線では復帰したヘグとおにいちゃんが、それぞれの持つ最大の技を繰り出していた。
猛虎の斬撃が光跡を作り続ける上空を、朱鳥が乱れ舞う。
一行に襲いかかる斬撃や呪文は、理力を迸らせたディナテスの回復呪文と りっか の祝福の杖がその意義を無に帰してゆく。
そんな3人が惜しみなく魔法や技を発動させられるのは、りっか からもたらされる魔力供与「MPパサー」のたまものだ。
攻撃、防御、行動速度……種々の強化魔法が一行に折り重なる。
度重なる猛攻に破綻を来たした冥王は、思わぬ変貌を遂げた。
己に覆い被さらんばかりの姿に、思わず魂消[たまげ]たディナテス。
その巨躯から振り下ろされた一撃が、彼女を打ち据え—-
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過日、ホームタウンドミナの面々ではこのような会話が飛び交っていた。
「『あなたは死なないわ、わたしが守るもの』とか言ってみたいなー、僧侶として」
と、おにいちゃんが口火を切る。
「それはむしろ、こっちに言わせてください系前衛ですがなにか」
言葉を返すのは、チームリーダーのイフェルだ。
事実、チーム内の後衛職メンバーが彼女の背に守られたことは数知れない。
「前衛が前線で守るなら、僧侶っつーか回復役が守るのは『死線』でしょう」
そこに、ディナテスが割り込んでくる。その顔には ドヤァ と書かれているに違いなかった。
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死線……か。
天使の理力を一部借り、無常の一撃を基とした法陣を組み上げる。
照準は魔瘴の天幕にしつらえられた光輪の舞台へ、装填するは……ディナテスの魂魄だ。
僧侶とは—僧侶に限らず—-戦いにおいて癒しを担う者は、死線を守る者である。
そう、お前は言ったな? ならば……
『死線を超えよ!』
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戦線に復帰したディナテスは自らの態勢を立て直し、癒やし手としての持ち場に戻る。
前線では、なおもツメとブーメランの協奏が続き、強化された種々の連撃は確実に冥獣の力を削いでいた。
そこに、先だって文字通りに彼女を魂消させた一撃が、再び迫る。
天使の加護は間に合わない。刹那の暗転。
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(え?あ? ……あれ?!)
弓手に持つ魔鳥の盾を介して、痛恨の一撃をはじき返させたのだ。
この程度の助力は、許されてもよいだろう。
臨戦態勢を解き、私は再び次元を隔てた観客に戻る。
「せんせーアシストでガードしないでしょ」という指摘は不問に処すように。
魔瘴の断末の果て、静寂を取り戻した光輪の舞台。
そこに残ったのは、二人の人間と二人のエルフだった。
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実にNKT……長く苦しき戦いであった。
……主に進捗速度的な意味で。遅い!
彼女がアストルティアでの旅をはじめてから、こちら側の次元で10ヶ月を越えていた。
交響楽団によるエンドロールとともに旅路を振り返る。
曲の終焉とともに綴られるのは「To be Continued」。そう、「つづく」のだ。
望むものたちがいる限り、探求と挑戦の道が終わることはない。
「姐さん つよボス行くでしょ?」
勧誘の声が、感傷にひたる我々を引き戻す。
したまつげ など、修羅道[エンドコンテンツ]の前ではほんの前座に過ぎない。
このあと、彼女はそう思い知らされるのである。
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1.x本編のラストバトルをようやくクリアです。おつかれさま!
このあとのバトルが熾烈すぎて、結果的に にぇるにぇる さんは前座になったんだけど。
クリア組が前線補佐とフォローに回ってくれたおかげで、未クリア組は火力と回復に専念できました。
せっかくのラストバトルなんで、ネタバレしすぎない程度に演出盛ってみたり。
システムログ見たら2回痛恨くらっていて、1回目は轟沈(天使で復活)2回目を盾ガしてました。
盾スキルまだまだ19とかなんで、こういう妄想しても、いいよね?
今でこそ「前座」っていっちゃってしまってるけど、HPパッシブ+100とってたワレワレも普通に痛恨で沈んでるし、レベルキャップ50、基本6職のみ、装備品も少ない ver1.0 でにぇるにぇるさん挑戦してた古豪の皆様の激闘が偲ばれます。
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しかしまぁ。
なんでワレワレ僧侶選んだんだっけなー……と今でも思います。
プレイ当初は「自分でホイミできる!」という魂胆でしたが、それだけなら盗賊だって旅芸だって覚えて序盤使えるし、スタート僧侶はHPと火力低くてきついじゃんねぇ。
それでも、ここまで通してきてメインの軸があまりぶれなかったのは、たぶん「パーティの死線を守る」ことに(自分への保険・保身も含めて)やりがいを見いだせてたんじゃないかな、と思います。
僧侶は特に迷宮コインボスや強ボスでシビアな立ち回りを要求される、と人づてに聞いて やっぱりがくぶるなんですが、やらないことにははじまらないわけで……このあとやってきましたよ。
- オレンジのバンダナがトレードマークのDQ9登場キャラクター。無法者のバンダナもデフォルトがオレンジ色 [↩]
- 「再度突入するとこも、内装がごっそり変わるとこも、誰かさんちを彷彿とさせるよね……?」 [↩]