雪合戦オフ Another Episode : Ahead on Our way

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先月の新潟雪合戦遠征から半月が経ちました。
そんなある週末に起きた、アナザーエピソードを。
レポートがまだ書きかけなので、行程が多少ばれてますが……
あと、語り手が「旅人」視点ですw

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春陽のぬくもりが残る夜道を、「あいつ」は駅を目指し歩いていた。
翌日が休みの金曜日の夜、時々仕事終わってから町中へふらっと出て行くんだよな。今日もそんな感じの日だったらしい。
行きつけの店で物色したあと、晩飯も食べて帰ろうと思ったのか、ふらふらアーケード歩いてたけど、結局どこにもよらずに帰路についてる。
駅―JR高知駅―のトレードマークになっている木でできたドームが見えてきて、あと数分もしないうちにも着こうかというところで、俺たちの目にとまった光景があった。

熟年の男性がカメラを構えている。持ってるカメラの画面に映ってるのは、同じ年頃であろう女性。
その背景には老舗のホテルがたたずんでいる。

それ見たあいつ、見知らぬはずのおっさんに声をかけたんだ。

「一緒に入りませんか?撮りますよ」

なんでだよ?

「あの二人は夫婦と見て間違いないだろう。こちらには旅行にきているようだな」
「同行者が写真を撮れば、撮っている本人が被写体になることはない。故に、奴は小さき助力を申し出た」

「そっか、旅行に行ったもんどうし、一緒に写ってる写真がある方がいいからな」
「しかもあのカメラ、キヤノンのPowerShot SシリーズISとみた」
「ちょっと待て、なんで そ こ ま で 見 て る ん だ」
「シルエットが似ておるのだ。ヤツがかつて使っていた、そのシリーズの初代機にな」

あのホテルに泊まるんですよね?アレ?ストロボ出さなくちゃ!あ、たたき食べてきましたね?
とかナントカ言いながらフラッシュが2回焚かれ、カメラは持ち主に返された。
そのぎらりとした光沢の黒いカメラには、[PowerShot S5 IS]と書かれてあった。
しばらくでっかいカメラしか使ってなかったあいつにも、それなりに撮れているだろう。

礼のあと地元の方ですか?と聞かれ、是と答えるあいつ。
ということは、この夫婦、やっぱり県外から来たってことだ。
今度はこちらから聞き返す。

「どちらからお越しなんですか?」
「ぼくらは、新潟から来たんだよ。」

(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー!!

「先月新潟に行ってきたばかりなんですよ!」
「すっげー!こんなことって、あるんだな!」
「この巡り合わせの、なんと希有なることよ」

俺たちは一様に驚きの声を上げた。
もっとも、俺とエクスデスの声は相手に聞こえてないけど――

あいつは、この間の旅行の話を続けた。
バスと特急を乗り継いで新潟に行ったこと、越後湯沢のぽんしゅ館でうまい酒を愉しんだこと、浦佐のスキー場で雪合戦したこと、本場のコシヒカリのうまさ、久保田の萬寿のこと……
それにしても、なんて偶然なんだ!
高知から新潟に行った俺たちが、高知にやってきた新潟の人たちに会うなんて!

「いつもは東京に出て新幹線で行くんだけど、今回は寝台列車を使ったんだ」
「寝台……というと『きたぐに』ですか?」
「そう『きたぐに』」

(;゚Д゚)(゚Д゚;(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー!!

「マジかよ!」
「なんと奇遇な……!」
「新潟からの帰りに乗りましたよ、『きたぐに』!!」

ご夫婦は、今度新潟来るときは取れたてのコシヒカリにうまい塩鮭が食べられる秋がおすすめですよ、と教えてくれ、今日泊まるホテルへと歩みを進めた。
高知を楽しんでくださいね、というあいつの言葉に見送られ、別れ際に交わした握手を、形のないお土産に
して……

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帰路に向かう列車に揺られながら、俺たちは奇妙な感動をもてあましていた。

「こんなことって、あるんだな……」
「偶然とは、『必然』の異名よ」

土佐の高知のはりまや通りで。
旅人同士がふれあった、小さな奇蹟。

旅の途中の[Ahead on Our way] 小さな奇蹟。

……って、はりまや橋じゃないのかよ、そこは。

「はりまや橋はずっと向こうだ、愚か者めッ!」

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というわけで、リアルアナザーエピソードでした。
新潟から、ってカミングアウトされたときはマジktkrでしたよ、ホント。